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じゃなくて 3 ふたり 



『じゃなーくて、まさきのせい、そろそろ気がついてよ』


へ?
空耳?
いや。。。
今、俺の名前を言ったよね?

『ひょっとしたら君、気づいてる?』
『わざと気づかない。。。。』

と歌が止まって、大きなため息と共に

『はぁ、振りしてるわけねーな。俺の気持ちなんか気づかないよなぁ』

俺はドアを開けるタイミングを失い、ドアのノブに手を当てたまま
動きを止めてしまってた。

『じゃ、帰ろ』
翔ちゃんの声、そしてガラスの向こうの影がドアに近づくのが見えた。
俺は慌てて、たった今来たみたいにノックして『かちゃり』ドアを開けた。

「あ、雅紀」
「しょ、しょうちゃん、まだいたんだ。えーっと傘を。。。」

目が合わせられなくて棒読みに言うと、傘立てに視線をやって
「あったあった、やっぱり雪が降ってきたよ」
と傘を手にしてから、この時初めて翔ちゃんの顔を見た。

「今来た。。んだよね。。。今の。。。いやいい」
翔ちゃんが顔を赤くしてる。

やっぱり。。。。あれは俺のことだったんだ。

「あ、うん。。玄関から戻って来た」
「うん。。」
二人の間に居心地の悪い息苦しい空気が漂う。



今しか言えない気がした。

もし今言わなかったら、きっと一生後悔する気がした。


十年以上翔ちゃんのことが好きで
これからも俺が生きてる間、ずっと彼の事を好きだろうけど

これから何十年一緒にいたって、今のこの瞬間しか
この気持ちを伝えられない気がした。



口の中はからからなのに、ごくんと喉を鳴らし。
翔ちゃんの顔から視線を外して、彼の持ってるカバンを見る。
空気が変わったのを感じてか
彼の手がすっと動き、考えごとをするときの癖。
唇に指を当てたようだった。






「翔ちゃんにとっての俺、親友。。。そんなの理想。。。じゃなくて」



俺は口の中で潰すように声を出した。すると、


「えっ。。。??」
彼の声が裏返る。


「翔ちゃん?」

「は。。はぃ。。。」



「この関係、いつまで続くの?」



そう言って顔を上げた瞬間、
身体が大きく揺れて、翔ちゃんの腕の中に包み込まれてた。

「うわっ。翔ちゃん」

彼は何も言わず力一杯俺を抱きしめてる。
驚いて固くなってしまった身体からゆっくり力を抜くと
翔ちゃんのぬくもりが身体に染み込んだ。
彼の香り、俺の大好きな香り。
力強い腕。。。



彼が耳元で大きく息を吸う音がして


「こんな関係はもう続かない。親友でもない」


いつもより掠れた声が聞こえた。


きっとこれを他の人が聞いたら、絶交の言葉だと思うだろうけど
今の俺にはこの言葉以上に嬉しいものはなくて。


「うん、うん」何度も頷いた。





「雅紀。。やっと気がついてくれた」
「翔ちゃんも」


がやがやっと廊下から声が聞こえて、
俺達ははっと身体を離した。


二人で顔を見合わせ、共犯者のように肩をすくめて微笑み合う。

「ぅうん」
翔ちゃんが喉を鳴らした。

「ん?」

「えっと、今から酒買って家に帰ろうと思ってたんだけど。。。うち来る?」
「いいの?」

「えっと、あーっと。そうだ、ハワイのレストランの時の写真も、DVDも出来てるし」
「それって、誘ってるんだよねぇ、で、俺をどうするつもり?」
そうからかって顔を覗き込むと、真っ赤になってしまった。

「じゃ、来なくていい」
翔ちゃんは唇を尖らして、くるっと振り返ると歩き去りそうになった。
「えー、行きますっ」

俺は咄嗟に翔ちゃんの腕を捕まえて引っ張った。
彼を掴んでる俺の手の上を
番組の時に触れた時よりも熱くて優しい彼の手のひらが包み込み
二人の視線が絡む。

そして、
窺うように彼の顔が目の前に迫った。


俺の心臓が壊れそうなぐらい高鳴り

翔ちゃんも怖い顔をして、
じっと俺を見つめたまま顔を近づけ
一瞬動きを止めてから、覚悟を決めたように唇を重ねた。



人生で初めての口づけのような、小さなキス。

でも、

俺達には、長かった片想いの終わりで、永遠に続く恋の始まり。






これから
二人の間で使う絵文字の♡マークは意味のあるものになるんだよ。









翔ちゃんちに向かうのタクシーの中、雪がちらつくのを目で追っていると
「雅紀さ、俺に紹介したい子がいるって言ってたけど、あれって嘘だったんだよね」
翔ちゃんが言い出した。

「あ、あれ?いるよ?」

「絶対惚れちゃうよって言ってたけど。。。」
翔ちゃんが首を傾げた。

「うん」

「なんで?なんで女の子を紹介しようとしたの?」
俺の顔を覗き込んで尋ねる。

「女の子じゃないよ」

「どういうこと?」

「ふふっ。俺のこと」

「え?。。家庭的でって、雅紀のことぉ???」

「あはは。そうだよ。マジで紹介しろって言われたらどうしようかと思ったけど」

「そ、そうだったんだ」

翔ちゃんは窓の外を向いて、何かを考えてるみたいだった。
光を反射した翔ちゃんの横顔を見つめてると
彼は外を見たまま手をそっと伸ばし、膝の上の俺の手を握った。

彼の手は、熱があるんじゃないかと思うほど熱くて
俺の身体もじわっと熱くなる。
胸に長い間押し殺して来た翔ちゃんへの気持ちが溢れ、


「翔ちゃんのことを理解出来る人は、俺しかいないからさ」



今までずっとずっと心にあったけど言えなかったことを告げた。

彼の理想のタイプは
もしかして俺じゃないかって思ってたから。。。



翔ちゃんは窓の外を見たまま『うん』と頷いた。

その彼の頬に、街の光が反射した気がした。



『友達じゃない』初めての夜。。。

俺は翔ちゃんに全てを捧げても
悔いはないな、なんて。。。

翔ちゃんの光る頬を見ながら考えていた。














じゃなくての
しっとり大人版でした。


では、バレンタインに智也と駿のお家でお会いしましょう。
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テーマ : BL小説
ジャンル : 小説・文学

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非公開コメント

素敵なお話でした。

じゃなくて、とても素敵なお話で読み終えて本当に感動しました。
お互いの想いをついに伝え合うことができて良かった!と思いました。素敵な櫻葉をありがとうございました。

Re: 素敵なお話でした。


この歌、雅紀が騙されてる感じがして、つらかったからどうしても櫻葉にしたくて。笑
これで私も楽しくこの歌を聴けます。
そういう変なモチベーションで話を書いてます。変ですね。
コメありがとうございました。

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