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じゃなくて 2 雅紀




翔ちゃんを見てると、どうしてこんなに不安になるんだろう。

こんなかっこいい人に恋人がいないなんてオカシイと
勝手な考えが頭の中に広がってしまうからだな。

さっきの撮影だって
視線を感じて顔を上げると、そこには翔ちゃん笑顔。
俺が笑顔を見せる前にあんな風に微笑まれたら、
俺の事好きなのかって勘違いするじゃん。

「あ、相葉さん」
家に帰ろうと帽子を深く被って楽屋を出たとき、
ハワイのときのスタッフとすれ違った。
「ハワイではお世話になりました。お疲れさまでした」
頭を下げると
「こちらこそ、楽しい番組になりましたよ。お疲れさま」
彼は挨拶だけして、翔ちゃんのいる楽屋に入って行った。
俺はその後ろ姿を見ながら、あのデートのような
翔ちゃんと二人きりの夜を思い出していた。
夕陽が沈む太平洋を見ながらの食事だった。

でも実はなんで俺だけを誘うんだって、とっても困ってしまってたんだ。
これは期待してもいいのかと思ったり。。。
でも、今まで期待したってなんにもいいことなかったし
だから、ただの頭数合わせなんだと思うことにして食事を心の底から楽しんでた。

あの時も、ふと食事をしながら
「なんで、彼女出来ないんだろう」って疑問が浮かんだんだ。
気がついたときは酒の勢いもあって本人に直接質問してしまってた。
翔ちゃんの周囲からはずっと、女の噂なんか聞かない。
メンバー同士、そんな話はしないけれど、でもなんとなく空気でわかる。

ニノとリーダーは別にしてね。
あの二人は。。
まあいいや。

俺は。。。

俺は女はこりごりだと思ってるし、それに。。。
彼女なんか必要ない。
好きな人が近くにいるんだもん。
どんな素敵な女性がいたって、誘惑されたって興味なんか出ないよ。

ろうそくの炎が大きくなり、白っぽい光が広がって
テーブルの向こうにいる翔ちゃんの顔を照らす。
いつものきりっとした顔を緩めて、
酒で真っ赤な唇をつやつやと濡らした彼が、お返しのように
「雅紀だって。。。なんで彼女が出来ないんだろう」と言い出した。

「俺は。。要らないから」

「やさしいし、おしゃれだし」
「そんなの、翔ちゃんだって」

「雅紀って明るくて楽しいしさ、付き合ったら楽しいだろうな」

彼が社交辞令のように軽く。。。俺の心にナイフを突き刺した。
こんな『もしも』の話が、一番。。。ツライ。
俺は心から血を流しながらそのナイフを振り払うと

「じゃ、翔ちゃん、付き合ってよ」

頬をきゅっと上げて意味深な笑みと共に言い捨てた。
そうでもしないとここで。。息絶えてしまいそうだ。

「あはは、そうだな。また遊びたいな。昔みたいに買い物とかしてさ」
男が男に付き合ってと言ったら普通はこうなる。
わかってるけど。。。

俺は、本気で言ったのに。。。

わかってもらえないこの気持ち、
胸の奥が軋む音がして、また音も無くゆっくり動き出した。
俺は翔ちゃんに壊れた歯車が気がつかれないように苦しい笑顔を作った。
「そうだね、買い物。翔ちゃんのお勧めの店に連れてってよ」

「じゃ、ついでにドライブもいいなあ」

もう頭の中に、日本のお店を浮かべてるみたいな顔をしてる翔ちゃん。
彼の指が水の入ったグラスの縁をゆっくりなぞってるのを見ながら

二人の距離が縮まらないなら、
このままずっと一緒にいられるだけでいいと思った。
その瞬間、俺の口から

「ずっとこのまま友達でいようね」
そんな言葉が零れ出た。

グループとしてはとても大事なことだけど
友達であることが俺達二人の間にある大きな溝なんだなと思うと
一気に熱いものが込み上げてきて
籠った澱みを吐き出すように小さく息を吐いた。
永遠に仲良くしていくには、これが一番大事なことなんだよね。

メンバーとして、友達であることが最善の解決策なんだ。

俺は彼の顔が見れずに真っ暗な窓の外を見ようとすると
そこには翔ちゃんの顔が映ってた。
表情のよくわからない暗い影のような翔ちゃんは
泣きそうな顔をしてた。

俺の心がそうだったから。。。
目に映る全てのものが、悲しそうに見えただけなのかもしれない。




あの日から、二人の関係に変化もないし
あんな会話があったことすら忘れてる気がする。

正月の慌ただしさが終わると、俺はドラマが始まるし。
この忙しさに終わりがないと思うと、
俺達はこのまま歳だけを重ねて行き、
仕事だけの自分しか残ってないかもしれない。。。
翔ちゃんとの距離は離れて行くだけかもしれない。。と不安が俺を襲って
昨夜はとても寝苦しかったんだ。

だから、その仕返しをする代わりに今日の撮影で翔ちゃんに近づいた。
翔ちゃんの困った顔を見てると
『俺はもっと寂しい思いをしてるんだよ、約束したドライブも連れてってくんないし』
なんて、嫌味を耳元で囁きそうになったけれど、
そんなこと言える訳もなし、
その代わりに、カメラの前で思いっきりくっついてやった。



翔ちゃんの身体に触れた手が熱を閉じ込めているように温かく感じる。
エレベーターの中で、壁にもたれてその手をじっと見つめてしまった。

手に触れたって、
肩を組んだって
キスしたって
全部番組上のこと。
何もやましいものはないはずなのに
俺には後ろめたいものが渦巻いてるから、こうして身体が疼く。

こんなふざけて触れたくないのに。


いい子がいるよなんて思わせぶりなことを言いたくないのに
付き合おうなんて冗談で言いたくないのに。


ずっと友達でいようなんて、言いたくなんかなかったのに。



そうじゃないのに。



ぼうっとしたまま
いつの間にか玄関まで来ていて、ふと立ち止まった。
あ。。。
「今日はタクシーで帰るんだった」
今頃思い出した。
寝不足もあって、ぼーっとしてたから。。。

それに、ドアの向こうを見ると
雪。。。
朝、念のために持って来た傘も楽屋に忘れて来た。

「ちっ。もうっ」
舌打ちして、身体をくるっと返しエレベーターに向かった。




「翔ちゃんまだいるかな」
帽子を直してから、楽屋のドアの前でノックしようとして、


『じゃなーくて、もしかして』
『じゃなーくて、好きな子いるの』
『じゃなーくて、ところでなんで彼女出来ないんだろ』


がちゃがちゃ片付ける音と歌を歌う翔ちゃんの声が聞こえてきた。
俺のソロなんか歌ってくれるって、うれしいじゃん

勢いよくノックしようとしてはたと手を止めた。









明日で終わりです。
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