スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

君の手袋

今年最後の記事です。パスワードなしです

ほっこりしてくださるとうれしいです


腐ってます、ご理解の無い方はご遠慮ください。

「わー翔ちゃん、雪」
ビルから先に飛び出した雅紀が空を見上げて言った。

真っ黒な空から、白い花びらのような塊がふわりふわりと
舞い落ちて来る。
「寒いはずだな」俺はダッフルコートのポケットに手を入れた。

今日は今から忘年会だって、他の3人の待つ近くの会場まで行かないといけない。
でも、こんな年末に車で向かったって、どうせ渋滞に巻き込まれるし
二人で歩いて行こうって決めたんだ。
遅い時間だし、帽子を被ってればバレないだろう。

「じゃ、行くか」
俺はビルを出て歩き出した。
「うん」

横を歩く彼の緑のニット帽に雪が付いて、まるで模様のようになってる。
俺の紺のダッフルコートにも白い模様が付いてる。

大通りは適度な距離を置いて、前後になって歩いていたけれど
ふと角を曲がって人通りが消えると、雅紀が俺の右手に並んで俺に顔を近づけた。

「翔ちゃん、手繋ぎたいね」

こんな場所であっても手を繋げるような俺たちじゃない。
俺は彼に「俺もだよ」って思いながら微笑んだ。

「そうだ」
俺はふと立ち止まって、右手の手袋を脱いだ。

彼は急に立ち止まった俺を振り返りこっちを見た。
「雅紀、お前の手袋一個ちょうだい」

「ん?」
「ほら手袋」
彼の顔がぱっと輝いて右手の毛糸の手袋を外そうとしてから「あっ」って言って
左手の手袋を外した

「右手だぞ」俺がそう言うと
「だって並んで歩くからさ」
そう彼が言って、自分の左手の毛糸の手袋を差し出した。

俺は自分の右手の革の手袋を彼に渡して、
まだ彼の温かさを感じる毛糸の手袋を右手に着けた。
そしてその手をほらって彼に見せてからポケットに突っ込んだ。
「見られちゃまずいからな」

彼は俺の革の手袋を着けようとして、
「ん?なんか入んないよ、あー気持ち悪い」って変な形になった彼の左手を見せた。

「あはは、革の手袋は左右逆はちょっと難しいな。ほら、右手に変える?」そう言ってやると、
「いいの、これで並んで歩けば翔ちゃんと手を繋いでる気分になれるから」

そう言って、彼もキツそうな左手をポケットに突っ込んだ。

隣を少し離れて歩くお互いの存在を感じながら、手をポケットに入れて歩く俺たち。
俺はポケットの中の雅紀の手袋をぎゅっと握った。








街ゆく人は、皆背中を丸めて先を急ぐ。

恋人たちは腕を絡めて
世界にはその人しかいないって目で見つめあいながら歩いて行く。

俺たちはそんな二人を見かけると、自分たちだけにわかるように視線を絡ませた。

そんな視線の間にも雪はふわりと通り過ぎ、彼の唇の上に落ちて
一瞬にして消えた。

温かい彼の唇を感じたい。

俺の唇にも冷たいものを感じて一瞬で水滴に変わった。




街はもうクリスマスから、お正月モード。
先日まで街を彩っていたクリスマスツリーも
もう精彩をなくして、片付けられるのを待つのみ。
クリスマスツリーも白いボードに囲まれて、光もなく寂しそうに立っていた。
「あーもう片付けるだけだなあ。結局電気が付いてるの見れなかった」
俺がツリーを見上げていると
突然、ぎゅっと俺の手が引かれた。

「わっ」
大きな声を出すと、彼が嬉しそうに「しー」って言って俺をそのボードの隙間から中へ引っ張り込んだ。

ツリーを囲む白いボードは、外からの視界を遮断してくれる。

俺たちはこの東京の街のど真ん中の人ごみの中で
いきなり二人きりになった。
外には車の走る音、人のざわめきが聞こえるけれど目の前には雅紀と寂しげな真っ暗なクリスマスツリー
そして、空から落ちる白い雪だけ。

雅紀は毛糸の手袋と革の手袋を合わせて俺を引き寄せ、俺の肩に頭を乗せた。彼の冷たくなった鼻が俺の首筋にちょんと触れると「鼻が冷たい」って俺に当てた。
「犬みたいだな」そう笑って顔を傾け、彼の鼻を温めてやった。
彼は「くうん」ってふざけた声を出して鼻を擦り付けた。

俺は握られていた両手を離して、彼の体をぎゅっと抱きしめた。

すると、顔を上げた彼の顔が目の前に近づき、少し冷えてる唇が俺に触れた。

俺は首をぐっと押し出して、彼にもっと強く唇を押し付け
彼の冷たい唇を温めるように彼の唇を包み込んだ。
二人の間にも雪が落ちるけれど、あっと言う間に溶けて消えて行く。

俺は顔を離すと、雅紀の漆黒の瞳を見た。

口づけで濡れた彼の唇、そして頬、長い睫毛にも雪が付いている。

「ロマンチックだね」そう彼が言いながら俺の睫毛の雪を払ってくれた。

俺は真っ黒な木を見上げ、その合間から落ちて来る雪を顔で受け止めた。
街の灯りで白い雪もちょっと輝いて見える。

「ロマンチックだな」
ちょうどその時、びーって外の車がクラクションを鳴らした。

俺たちは顔を合わせて、くすっと笑うと
「みんな待たせてんだよな」ってどちらともなく言ってそこをこっそり出た。

また街の喧噪に包まれながら、彼の歩く右側がさっきより温かくなるのを感じて
ポケットに入れた右手の手袋をぎゅっと握った。
彼もポケットの中の手を握りしめてるようだ。

目的の場所はすぐそこだった。

店の前のちょっと影になった場所で俺は立ち止まり、毛糸の手袋を彼に返した。
雅紀も残念そうに手袋を脱ぐと
「はい」って俺に渡した。

「じゃ、入ろう」
そう言って、彼が左手に着けていたまだあたたかい手袋を再び自分の右手に着けた。
すると、手袋は変な形に伸びて大きくなってしまってた。

俺が指を動かして手袋を見てるので、雅紀が「どうしたの?」って聞いた。

「感じが違う」
「あ、俺の手で伸びちゃったね」

でも、俺にはなんだか今年の素敵な思い出をこの手袋に刻んだ気がして
うれしくてもう一度手を伸ばして左手と比べた。

「この手袋を着けたら、雅紀を思い出すからいいや」

そう笑うと、彼も「そうだね」って言って空を見上げた。

いつの間にか、雪も止んでしまってる。
「雪も止んじゃった」


まるで、雪が俺たちの素敵なデートを演出してくれてたみたいだった。

「でも、デートみたいだった」
俺が言うと、雅紀は
「うん、雪の中のデート」

って言った時、

「あーいたいた、待ってたんだぞ」
店のドアの方から潤くんの声がした。


「ごめんごめん、遅くなった~歩いて来たからさ」
雅紀は何もなかったかのように、店の中に入って行った。


雪が一つだけ、まるで名残を惜しむかのように俺の腕に舞い降りた。

俺はそれをぶかぶかの右手の手袋でそっと触れた。

「しょーちゃん、早く」

「うん、今行く」

今年最後の雪のかけらは、溶けて俺のコートに染み込んでしまった。






なんだか、二人の思い出を体に染み込ませた気分がした。









関連記事
スポンサーサイト

テーマ : BL小説
ジャンル : 小説・文学

コメントの投稿

非公開コメント

検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。